リースの会計・財務上の取り扱い(3)
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
今年の夏はダブル高気圧の影響で例年より暑くなると報道されており、8月上旬に暑さのピークをむかえるとか。
熱中症には厳重な警戒が必要です。みなさまご自愛ください。
さて今日はリースの会計・財務上の取り扱いでの最後のコマ、所有権移転ファイナンスリースとオペレーティングリースについて見て行きましょう。
本テーマにおいても財務視点でのお話しになりますので、リース契約における会計処理の詳細なお話は顧問税理士先生にお伺いください。
所有権移転ファイナンスリース
所有権移転ファイナンスリースとは
リース契約が満了した際、リース物件の所有権が借手に移転すると認められるリース契約です。
所有権移転ファイナンスリースの処理
売買処理を行います。
なお所有権移転ファイナンスリースにおいては簡便な処理を行うことはできません。
ただし、次の1または2に該当するリース取引においては、賃貸借処理(オフバランス)することが可能です。
- リース期間が1年以内のリース取引
- リース料総額が、購入時に費用処理する基準以下のリース取引
オペレーティングリース
オペレーティングリースとは
ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。
オペレーティングリースの処理
賃貸借処理(オフバランス)を行います。
解約不能のオペレーティングリースの場合においては、解約不能期間中の未経過リース料について、以下に区分して注記する必要があります。
- 1年以内のリース期間に係る未経過リース料
- 1年を超えるリース期間に係る未経過リース料
またリース期間中の一部期間を解約不能としている場合は、その解約不能期間中の未経過リース料を注記することとなります。
ただし次のA~Dいずれかに該当するオペレーティングリース取引の場合は、注記が不要となります。
A.事業内容に照らして重要性が乏しく、かつリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引
※一つの契約に科目の異なる資産が含まれている場合は、異なる科目ごとの合計金額が300万円以下のリース取引
B.リース期間が1年以内のリース取引
C.少額資産のリース取引
※重要性が乏しい一定の基準額以下の減価償却資産について、購入時に費用処理する方法を採用している場合、個々のリース物件のリース料総額がその基準額以下のリース取引
D.数ヵ月程度の事前予告をもって解約でき、予告した解約日以降のリース料の支払いを要しないリース取引における、事前解約予告期間(解約不能期間)に係る部分のリース料
リースの会計・財務上の取り扱いについては以上です。
次回はリース契約の最後のテーマ。税務上の取り扱いについて見て行きましょう。
それではまた。
リースの会計・財務上の取り扱い(2)
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
連日コロナの新規感染者が過去最高を更新し、埼玉・千葉・神奈川・大阪にも緊急事態宣言が出されました。
オリンピックの真っ只中というのに、、ニュースに事欠かない日が続きますね。
さて今回は前回に引き続き、リースの会計・財務上の取り扱いです。
前回の記事をまだ見ていない方はこちらからご覧になってください。
毎度のことですが、リース契約における会計処理の詳細なお話は顧問税理士先生にお伺いください。
所有権移転外ファイナンスリースの処理
リース期間終了時の処理
所有権移転外ファイナンス・リースの場合、リース期間が終了したとき借手は特に会計処理は必要になりません。
ただし残価保証がある場合、貸手に対する支払額(借手の残価保証額-貸手による物件処分価額)が確定したときに、この支払額をリース資産売却損等として処理します。
またリース期間終了後に再リースとなった場合は、借手は再リース料を発生時の費用として処理します。
減価償却方法の注記
ファイナンス・リース取引のリース資産は、その内容(主な資産の種類)や減価償却方法の注記が必要になります。
ただし、未経過リース料の期末残高割合が10%未満の、重要性が乏しいリース取引の場合には注記を要しません。
簡便な会計処理
未経過リース料の期末残高割合が10%未満の、重要性が乏しいリース取引の場合、重要性の観点から次の(a)または(b)のいずれかの方法にて簡便な会計処理をすることができます。
a.支払リース料から利息相当額を控除しない方法
b.利息相当額の総額を定額で配分する方法
また未経過リース料の期末残高割合の算式は次の通り。
未経過リース料の期末残高 / 未経過リース料の期末残高 + 有形および無形固定資産の期末残高
賃貸借処理(オフバランス)
次の1〜3のいずれかに該当する場合は、上記にかかわらず、賃貸借処理(オフバランス)することが可能です。
1.一契約300万円以下のリース取引
リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下で、かつ企業の事業内容に照らして重要性が乏しい場合は賃貸借処理できます。
なお一つの契約に科目の異なる資産が含まれている場合においては、異なる科目ごとの合計金額により判定することができます。
2.リース期間が1年以内のリース取引
3.リース料総額が、購入時に費用処理する基準以下のリース取引
個々のリース物件のリース料総額が、購入時に費用処理する基準以下の場合で、かつ企業の事業内容に照らして重要性が乏しい場合は賃貸借処理できます。
今回はここまで。
次回はリースの会計・財務上の取り扱いについてのなかでも、所有権移転外ファイナンスリース以外の部分について見ていきます。
ではまた。
リースの会計・財務上の取り扱い(1)
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
ついに開幕した東京オリンピック。
すでに前回のリオデジャネイロオリンピックのときの金メダル数を超え、ハイペースでメダルを獲得しています。
このまま頑張れ日本!
さて、本題へ。
本日のテーマはリースの会計・財務上の取り扱いについて。
リースを財務観点から見た内容なので、当ブログの主題ともいえるテーマですね。
なお本記事は公益社団法人リース事業協会様が公開しているリース会計基準の概要を参考にしております。
詳しくはこちらからどうぞ。
本記事はあくまでも財務観点からのお話ですので、詳しくは顧問税理士さんにご確認ください。
ではさっそく見ていきましょう。
リースの会計基準
適用時期
現在のリースの会計基準については、2007年に"企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」" 及び "企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」"にて公表され、2008年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度より適用されます。
四半期財務諸表に関しては、2009年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る四半期財務諸表から適用されます。
※国際財務報告基準(IFRS)を任意適用している会社は、2020年3月以降の決算より新リース会計基準(IFRS16号)の適用が義務付けられます。
詳しくは税理士先生にご確認ください。
適用範囲
前回も少し触れましたが、おさらいです。
以下の2つの適用対象とならない会社について、リース会計基準が適用されます。
・中小企業の会計に関する指針
・中小企業の会計に関する基本要領
つまり中小企業(*)はリース会計基準が適用されません。
*金融商品取引法の適用対象会社または会社法上の会計監査人設置会社を除く中小企業
財務諸表上の取り扱い
原則処理(利息法)
次の1、2で、低い金額をリース資産・リース債務としてB/Sに計上します。
1.リース料総額の現在価値
※借手の残価保証がある場合は残価保証額を含む
2.貸手の購入金額
※貸手の購入金額が明らかでない場合は見積現金購入価額
なお原則として、リース資産は有形固定資産、無形固定資産の別に、一括して「リース資産」として表示することもでき、有形固定資産または無形固定資産に属する各科目に含めることもできます。
またリース債務は、リース料の支払期限1年以内のものは流動負債に表示、支払期限1年超のものは固定負債に表示します。
リース資産の減価償却
所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合、リース資産はリース期間を耐用年数とし、残存価格を0として減価償却します。
ただし残価保証の取り決めがある場合は残価保証額が残存価格となります。
減価償却の方法
リース資産の償却方法は、企業の実態に応じたものを選択できます。ただし税法上は「リース期間定額法」のみ認められており、実務上では「リース期間定額法」により減価償却を行います。
万が一「リース期間定額法」以外の減価償却方法で償却し、その額が税法上の償却限度額を超えた場合は、超過額は税務上当期の損金として認められません。
支払リース料の処理
支払リース料は、利息相当額部分と元本返済額部分に区分し、前者を支払利息として、後者をリース債務の元本返済として処理します。利息相当額は原則として利息法により、リース期間中の各期に配分します。
なお利息相当額の算定に用いる利子率は、リース料総額の現在価値が、リース資産及びリース債務の計上価額と等しくなる利率となります。
今回はここまで。
次回も引き続きリースの会計・財務上の取り扱いについて見ていきます。
ではまた
2種類のリース取引
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
関東はついに梅雨明けしましたね!これで洗濯物が気持ちよく乾きます。よかった・・・!
気温が上がってきているので皆様体調管理にはお気をつけください。
さて、本日は(本日も)リースについてです。
今回は会計・財務上の取り扱いについてお話しする前に、リースには大別して2種類あることを説明します。
ではさっそく見ていきましょう。
適用範囲
まず大前提として「中小企業の会計に関する指針」又は「中小企業の会計に関する基本要領」の適用対象とならない会社は、リース会計基準が適用されます。
金融商品取引法の適用を受ける上場会社等は、財務諸表等規則により、リース会計基準の適用が義務付けられています。
つまり中小企業(*)はリース会計基準が適用されません。ですので今回の内容は基本的に上場会社等の話になりますのでご参考までにご覧ください。
*金融商品取引法の適用対象会社または会社法上の会計監査人設置会社を除く中小企業
リース取引の種類
ファイナンスリース
リース取引は基本的に途中解約することができないと以前触れましたが、それがこのファイナンスリースです。
正確には、途中解約が不可で、かつリース物件の使用によって生じるコストを借手が負担する取引(フルペイアウト)のことを指します。
さらにリースする物件の所有権が貸し手に移転する「所有権移転ファイナンスリース」と、それ以外の「所有権移転外ファイナンスリース」とに分かれます。
ファイナンスリースの判定基準
ファイナンスリースの具体的な判定基準はさらに細かく設定されており、次の1または2に該当するものはファイナンスリースと判定されます。
1.現在価値基準(90%基準)
途中解約が不可で、かつリース料の総額の現在価値が、その物件の見積現金購入価格(物件を現金で購入した場合の合理的な見積金額)の概ね90%以上の取引
2.経済的耐用年数基準(75%基準)
リース期間が物件の耐用年数の概ね75%以上である取引
ここで「概ね」と使用しているのは、たとえその割合以下でも実質的にフルペイアウトとみられる場合にはファイナスリースとして判定されることもあるためです。
また現在価値の詳しい算定方法などは税理士先生などにお尋ねいただければと思います。
オペレーティングリース
基本的に、ファイナンスリース以外のリースはすべてこのオペレーティングリースと覚えておけばOKです。
本日はここまで。
次回はついに財務的な立場でみたリースについて触れていきたいと思います。
梅雨が明けたことでグッと気温が上がっているのでみなさまご自愛くださいね。
ではまた。
リースのメリット
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
12日から4度目となる緊急事態宣言が発令されました。
飲食店では営業時間の短縮や酒類の提供制限など、またもやがんじがらめでの営業になりそうです。
自粛自粛ばかりで息苦しい世の中になりましたね・・・
さて本題へ。
今回は前回の続きでリースについて。今回はリースのメリットについて見ていきましょう。
リースのメリット
財務面・会計面
金融機関の借入枠を温存
リースでは金融機関からの借入枠を使わなくて済むため、資金調達力に余裕が生まれ何かあったときの保険にもなります。
初期費用を抑えることができる
購入となれば多額の資金が必要になりますが、リースであれば少額で物件を導入することができます。
コストの把握が容易に
購入の場合は減価償却や固定資産、保険など様々なコストが発生してきますが、リース料であれば月々のリース料の支払いだけ。
事務作業の合理化
上記でも触れましたが、リースでは物件に関わる固定資産税や各種保険料が必要ないため、支払い業務などの事務作業が比較的楽となります。
機能面
最新機種を使用できる
リース契約が終了後に最新機種を入れ替えることで、定期的に物件をアップデートすることができます。
契約から導入までがスムーズ
金融機関からの借入に比べ、契約に関する手続きが迅速に行われるため、物件の導入・利用までがスムーズに。機会損失を防ぐことができます。
廃棄に関する問題をクリア
物件が必要なくなり廃棄する場合、購入の場合は廃棄物処理法に則り然るべき対応をする必要があり、廃棄にかかるコストも当然かかってきます。リースの場合は物件を返却するだけで事務作業もコストもかかりません。
また本題とは少しずれますが、軽くデメリットも見ておきましょう。
リースのデメリット
- 途中解約ができない
- 所有権はリース会社
- 支払総額が一括購入より高額になる
といった具合でしょうか。
次回以降では財務視点での本題、会計上や税務上での取り扱いについて触れていきます。
ではまた。
リースの基礎知識
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
なかなか晴れ間がなく洗濯物がどんどん溜まっていく時期ですね。。
前回までオフィス移転にスポットをあててお話してきましたが、今回からはリースについてお話ししようかと思います。
ではまいりましょう。
リースとは、レンタルとの違い
さすがにリースそのものを知らないという方は少ないかと思いますが、リースとレンタルとの違いはご存知でしょうか。
リースとレンタルの大きな違いは、まず契約期間。リースは数年単位で借りる長期契約が一般的ですが、レンタルだと最低1日からという短期契約が可能な物件もあります。
次に調達方法の違いがあります。リースは顧客が希望する物件をリース会社が購入しそれを貸し出すかたちとなりますが、レンタルはあらかじめレンタル会社が用意している物件を貸し出すかたちとなります。
他にも複数の点において相違点がありますので、簡単に表にまとめました。
さらに詳しく知りたい方は以下のサイトをご確認ください。
リースの流れ
不特定多数の利用者がいるレンタルとは違い、リースは特定の顧客に物件を長期的に貸し出します。
また物件も機械や設備といった非常に高額なものになるため、レンタルのように気軽に借りられるものではなく、会社の支払能力や信用までチェックされます。
簡単に流れを説明します。
- 見積もり・試算
- 申し込み書類・財務資料の提出
- 審査
- 契約締結
- リース物件の発注
- 納品後リース契約開始
納品後は月々リース料を支払い、契約満了時に物件を返還するか再度リースするかを決定します。
なおリース料は基本的に一度目の契約期間で全額回収できるように設定されているため、再リースとなる場合はリース料が割安になるケースが多くあります。
いかがでしたでしょうか。
リースの具体的なアウトラインを掴んだところで、次回はリースのメリットについてみていきます。
ではまた
財務視点でみるオフィス賃料の適正(3)
こんにちは。
Revd Advisory(レヴアドバイザリー)株式会社 代表の湯田平です。
前々回、前回とお送りしてきたオフィス賃料について。
締めくくりとなる今回は、本テーマの主軸であるオフィス賃料の適正についてお話しします。
重ねますが、本テーマはあくまでも財務視点ですので、詳細なお話は税理士先生などにお伺いくださいね。
ではさっそく。
オフィス賃料の適正とは
オフィス移転において、一番気になることはやはりその賃料かと思います。
当然安ければ安いに越したことはありませんが、どの程度の金額感が正しいのか。
オフィス賃料の相場に迷われたら、自社の財務状況を考えてみましょう。
一般的に、年間のオフィス賃料は粗利の1〜2割が妥当と言われます。
*注意
もちろん業種やビジネスモデル、従業員数、エリア、さらに時期など多くの要因によって割合は変わりますので、あくまでも平均的な数値としてご認識ください。
オフィスの選び方
もちろんオフィスを選ぶ際には賃料以外もチェックしなくてはなりません。
- 業種・ビジネスモデルごとの必要な設備はあるか?無い場合でも設備を置くスペースや条件を満たしているか?
- 騒音や異臭など、周りに経営に悪影響を及ぼすような施設等はないか?
- 駅から遠くないか?車通勤が前提となるならば駐車場等はあるか?
- セキュリティ面は甘く無いか?
- 社員のモチベーションが上がるようなオフィスか?
などなど、多方面から情報を収拾する必要があります。
また賃料においても、「安かろう悪かろう」という言葉があるように安すぎるのもちょっと考えものです。
不動産屋が知り合いで特別安くしてくれているならまだしも、何も根拠がないのに安い場合はそれなりに理由があるから安いのです。
夏場に異常に暑かったり、逆に冬場に異常に寒かったり、害虫が湧いたり、水回りに問題があったり、、そのときの内見だけではわかりにくい箇所もありますので、オフィスを探す際にはしっかり情報収拾に努めましょう。
オフィス賃料まとめ
全3回にわたってお送りしてきた「財務視点でみるオフィス賃料について」。
最後に本テーマを統括し締めくくりたいと思います。
オフィス移転時の費用を計上する際は、赤字決算に注意
移転にかかる費用のうち、P/Lに反映すべき費用は多くはありません。計画的に処理することで赤字を回避することが可能です。
事前にどの程度の費用感になるかを把握する必要がある
特に初めてオフィス移転するという方は、オフィス移転の計画が出た際に必ずシミュレーションするようにしましょう。
会社の経営者と経理担当のコミュニケーションが重要
移転の意思決定は経営者にあるため、独断で移転が決まってから「会計処理はよろしく」とならないように!経営者と経理担当が二人三脚で計画的に進めましょう。
いかがでしたでしょうか。
オフィス移転をする際は、シミュレーション、情報収拾、そして資金使途ごとの会計処理を心がけ、財務状況を悪くしないようにご注意ください。
ではまた。